人類学と歴史学の接点はたくさんあると思いますが、今回は「戸籍」「族譜」の問題について話したいと思います。まず現在の中国人の「移動」について、これを三百年後の歴史学者と人類学者が研究したら、お互いどのような結論に達するでしょうか。おそらく歴史学者は、「都市戸籍」と「農村戸籍」がはっきりと区別して存在することから、人々はその生まれ故郷からほとんど移動できなかったという結論に達するでしょう。これに対して人類学者はまったく反対の意見を提出するでしょう。なぜなら中国人の中には、華僑(国外移民)にとどまらず、国内で盛んに移住を繰り返してきた人々が沢山いることを、最初に指摘したのが、人類学者だからです。