商業史家は、商業機関を研究対象に商業機関に人格的特徴を賦与し、会社の管理や操作を通して、人格的特徴を備えた商業機関の行為、活動範囲を知ることができる。また、活動家としての商業機関の生産、発展及び萎縮と再生産の成長過程を理解することができる。そのため、商業の歴史を研究するならば、「法人」としての商業機関、「人」（企業家）によって管理また操作する商業機関、といった点を考察することになる。商業史家は、容易に二つの落し穴に入る。一つには、微視的な意味での構造自体における歴史的過程、二つには政治的、経済的環境への依存という巨視的な構造である。しかしながら、華人商業を研究する学者は常に、華人商人の特徴を「社会関係は強いが、組織管理は弱い」と指摘する。このような特徴は、大部分の華人商業が、家族経営の形態に基づいて運営していることに由来する。家族経営は関係性に依拠し、その関係性の最も基本的な構造は血縁と地縁である。関係性とは一種の文化資源である。それは、後継ぎ（血縁）、地域言語、職業あるいは信仰等の共通要素によって、人々は共同性のある集団へと結び付けられる。これらの要素は多様なために、ある要素で結ばれた集団を選択または強調すると同時に、組織過程の中で他の部分を放棄または弱化するといった意味を持つのである。それ故、関係性というのは選択的で、維持或いは分断することが可能となる。制度化される前の華人商業を理解するためには、現地に入って、選択や分断といった関係における過程を理解する必要がある。我々は特に、海外にいる中国商人と彼ら故郷の関係に着目する。故郷の貢献は彼らに対しては、資本を利用することで社会·経済機能の競争をすると見なしていいのか？これらの活動は、社会の距離を深めるため、家族企業の発展を妨げるのか？人びととの関係における活動と分析には、時間と空間の差異はあるのだろうか？これらの問題に対する回答は、フィールドワークの中にのみ探し出すことができる。