社会人文科学において、人類学が「現在」の科学であるに対して、歴史学が「過去」の科学であるという定説がなお根強く在している。この定説を再吟味するため、自分のベトナムおよび日本における調査から得られた知見に基き、「歴史」「人類学的歴史」をめぐる方法論的議論(Ladurie 1973,1983;Levi-Strauss 1983;関一敏編 1986;末成道男 1996;森明子編 2002;林开世2003;春日直樹2004;杉島敬志 2004;中西裕二 2006)を参考し、両者の質実的生産的な交流を目指す「歴史人類学Historical Anthropology」を数年前より論じ始め、両者の実質的生産的な交流が行われることを強く望んでいる(Chu Xuan Giao 2005,2006a-b,2010)。