沖縄には、1879年に日本政府によって廃されるまで琉球王国が存立していた。王国時代、首里王府に奉職する役人層は士(サムレー)と称された。彼らの士身分を象徴するものの一つに「家譜」がある。「家譜」は父系の血縁集団である「門中」を単位として作成された。家譜には、門中構成員の個々人について、戸籍的記録-名前〈童名、名乗、唐名〉、誕生、婚姻、子、死亡、墓所etc、さらに履歴的記録-叙位、任官、功績etcが記載された。家譜の記録は、収録される個々人の記録を通して、その人々が属する社会の様々な面のデータ〈家族、婚姻の有様、寿命etc〉を提供し、職務内容を通じて、王府の行政組織、システム、薩摩藩や幕府殿関係、中国関係など王府の外交、交易に関する情報を提供する。琉球史を研究する立場からすると貴重な史料となっている。